最新の研究では、記憶が脳に格納される仕組みについて抜本的な見直しが行われている。かつて記憶はスナップ写真のように、一度記録されると細部は固定されたままになると考えられていた。だが現在では専門家の多くが、記憶は棚に収納されている個別のファイルのように、取り出して閲覧したら、しまうときには別のファイルに置き換えることができるという考え方に賛同している。つまり、記憶を棚から取り出している間に修正すれば、古い記憶を、新たに更新された記憶と置き換えて格納し直すことができるということだ。
トラウマがあるという人は多いと思う。かくいう筆者もじつはつらいトラウマがある。あまり、いいたくないし、思い出したくないものだ。おそらく無意識のうちに抑圧している。そんな、つらい記憶は、書き換えられるというのだ。どういうふうにすれば書き換えられるのか、興味がある。というか、この問題はトラウマに苦しむ人には切実だ。やり方は次のようなものらしい。
初の記憶を格納庫から取り出した後に治療を施し、元の記憶が別の新しい記憶に置き換えられて蓄積されるようにする方法だ。その1つが、まず被験者に原因となった出来事を詳しく記述させ、それを治療のたびに読ませるやり方だ。
詳しく記述し、それを読み直すことによって、脳内の新たな場所に格納され直されるということのようだ。つまり、つらい記憶はつらいからといって思い出すのを避けて、抑圧しがちであるが、それはよくないということだろう。詳しく思い出したほうが、新たなところに格納され、新しいものとして負担が軽減されるのだ。興味深い話である。臨床で確かめて、確実な治療法を開発してほしいものである。
